心理的瑕疵が不動産の売却価格に与える影響とは?告知義務についても解説

心理的瑕疵が不動産の売却価格に与える影響とは?告知義務についても解説

不動産自体に問題がない場合でも、心理的に抵抗を感じるような物件は「心理的瑕疵」として扱われ、売却時に告知義務が必要になります。
また、心理的瑕疵は、不動産売却時の価格にも大きく影響することがあるため注意しましょう。
そこで、心理的瑕疵とはなにか、不動産売却に与える影響や告知義務について解説します。
不動産売却をご検討中の方は、ぜひ参考になさってください。

不動産売却前に知っておくべき「心理的瑕疵」とは

不動産売却前に知っておくべき「心理的瑕疵」とは

不動産売却では、建物や土地自体に問題がない場合でも、買主に心理的に嫌悪感を与えてしまうような物件も瑕疵として扱われます。
これは「心理的瑕疵」と呼ばれ、売却時には告知義務が発生します。
ここでは、心理的瑕疵とはなにか、また告知義務についても見ていきましょう。

心理的瑕疵とは

心理的瑕疵とは、建物に構造上の問題はないものの、生活するうえで心理的に抵抗感や嫌悪感を抱く欠陥のことをいいます。
心理的瑕疵として、もっともイメージしやすいのが、他殺や自殺など人の死を連想するいわゆる事故物件ではないでしょうか。
事故物件とは、自殺や他殺、事故が室内で起きた物件のことを指します。
そのため、一般的な自然死や病死、老衰は事故物件には該当しません。
また、心理的瑕疵とは、人の死が関連すること以外にも以下のようなケースも該当します。

●近隣に嫌悪感を抱く施設がある場合
●悪臭や騒音など周辺環境の問題


心理的瑕疵は事故物件だけでなく、近隣に嫌悪感を抱く施設がある場合も該当します。
たとえば、反社会的組織、墓地、火葬場、刑務所があるような場合です。
そのほかにも、ひどい悪臭や騒音がある場合も心理的瑕疵に含まれます。

心理的瑕疵に該当する場合は告知義務がある

前述したように心理的に住みたくないと思うような瑕疵がある場合は、告知義務が生じるため注意が必要です。
告知義務とは、売買契約前に売主が負う義務で、買主に瑕疵の内容を伝える義務のことです。
つまり、不動産売却をおこなうときは、売却する前に買主に対して伝えておく必要があるため注意しましょう。
なお、告知義務については、後ほど詳しく説明します。

心理的瑕疵がある不動産は売却価格に影響する?

心理的瑕疵がある不動産は売却価格に影響する?

心理的瑕疵がある不動産は、売却価格にどのように影響するのでしょうか。
ここでは、心理的瑕疵がある場合、売却価格が通常と比べてどの程度安くなるのかを解説します。

売却価格は2~5割程度低下する

心理的瑕疵がある不動産の売却価格は、通常の物件に比べて2~5割程度下がるといわれています。
なぜなら、心理的に嫌悪感を与えるような物件は、買主に敬遠されがちであるためです。
そのため、余程立地条件が良くない限りは、値下げせざるを得ないのです。
ただし、どのくらいの値下げが必要かどうかは、心理的瑕疵の内容によって異なります。

売却価格は心理的瑕疵の内容で異なる

事故物件の場合、心理的瑕疵の内容によって売却価格が変わってきます。
一般的には、他殺や自殺のような場合は、5割程度の値下げが必要になります。
なぜなら、そのような物件は、遺体の血液や体液が物件に付着したことを想像させたり、被害者の霊がいるのではと疑われたりするためです。
また、テレビなどのメディアで報道されたり、事故物件サイトに掲載されたりすることもあるため、価格を下げないと売れない可能性が高いからです。
一方で、孤独死や自然死の場合は、2割程度の値下げで済むでしょう。
高齢者に伴う自然死や病気でなくなった場合は、事件性がないので心理的瑕疵による影響がほとんどないためです。
ただし、実際は買主が居住に対してどのくらいの不安を感じるかで、売却価格は変わってきます。
そのため、場合によってはそれほど値下げしなくても売却できるケースもあります。

心理的瑕疵の不動産を価格を下げることなく売却する方法

事故物件のような心理的瑕疵がある場合でも、できるだけ価格を下げずに売却したいと考えるでしょう。
そのような場合は、以下の対策をとることをおすすめします。

●リフォームや清掃をしてきれいにする
●建物を解体し更地にして売却する
●ホームインスペクションをおこなう
●不動産会社に買取依頼する


事故物件である以上、不動産価値に何らかの影響を与えてしまいます。
そのため、リフォームや清掃をして綺麗にしたり、建物自体を解体して更地にしたりすることで、事故物件の悪いイメージを払拭することができます。
また、事前にホームインスペクションで建物の丈夫さを証明するのもおすすめです。
事故物件でもそれ以上の価値を証明できれば、購入したいという方が現れるかもしれません。
さらに、不動産会社では、仲介以外に直接物件を買い取る「買取」もおこなっています。
売れ残った事故物件を放置しておけば、どんどん劣化が進みさらに価格を下げることになります。
価値が下がる前に、早めに買取で売却してしまうのも1つの方法といえるでしょう。

心理的瑕疵がある不動産を売却する際の告知義務とは?

心理的瑕疵がある不動産を売却する際の告知義務とは?

前述しているように、心理的瑕疵に該当する不動産を売却する際は、告知義務が発生します。
ここでは、告知義務が発生する心理的瑕疵の基準や、告知義務違反をするとどうなるのかを解説します。

告知義務が発生するときの心理的瑕疵の基準

心理的瑕疵のなかで難しいのは、どのラインから告知義務が発生するかといった判断基準です。
たとえば、殺人や自殺などが発生した不動産であれば、告知が必要なことは誰もが検討が付きます。
一方で、自殺未遂によりその後病院で亡くなったようなケースでは告知する必要があるのでしょうか。
実は、このようなケースで告知義務が発生するかどうかは、法律で明確に定められているわけではありません。
そのため、過去の判例をもとに個別に判断することになります。
なお、過去の判例では、以下のようなケースは告知義務が必要とされています。

●自殺
●他殺
●変死・焼死
●不審死
●亡くなってから長期間経過して発見された場合


上記のような不自然な死の場合は、告知義務が必要と考えておいたほうが良いでしょう。
また、自然死や孤独死の場合は、原則として告知義務は生じないとされていますが、亡くなってから長期間放置され発見された場合は、告知義務が必要になります。
なお、自然死や孤独死ですぐに発見された場合や、室内で体調をくずし病院で亡くなったようなケースは告知義務はありません。

告知義務はいつまで必要?違反するとどうなるのか

告知義務が必要な不動産の場合、いつまで告知義務が生じるのでしょうか。
一般的に、売買の場合は6年程度経過するまで、賃貸であれば3年程度と考えられています。
また、事故物件を購入した方がさらに転売するときには、告知義務が不要とされています。
ただし、心理的瑕疵の内容によっては、期間に関係なく告知が必要なケースもあることから、個別に検討することになるでしょう。
告知義務に違反した場合は、買主から損害賠償を請求されたり、契約解除されたりする可能性があるため注意が必要です。
なお、心理的瑕疵がある場合は、重要事項説明書に記入し買主へ説明するほか、売買契約書に盛り込むことが重要です。

まとめ

心理的瑕疵とは、いわゆる事故物件が該当し、心理的に嫌悪感を抱くような物件を指します。
心理的瑕疵に該当する場合は、通常の物件と比べると2~5割程度価格を下げなければ売れないケースもあるため注意が必要です。
また、自殺や他殺など不自然な死の場合や、亡くなったまま長期間放置されていた場合は、告知義務が発生することを覚えておきましょう。